獲得免疫の鍵は腸にあり

 

腸は人間にとって最大の免疫臓器です。

リンパ球のB細胞やT細胞の大部分が、腸に分布しています。

全身のB細胞の約70%がここに分布し、IgA抗体を主とする1日35グラムの抗体がつくられています。

粘膜固有層でつくられたIgA抗体は、上皮細胞でつくられる分泌たんぱくと結合して分泌型に変わり、粘膜層に含まれています。

腸の免疫機構は、IgA抗体をつくって粘膜を守るしくみと、血液中でIgG抗体をつくって全身を守るしくみと、二重の防衛網を活性化します。

そんな腸での免疫機構の役割を呆たしているのパイエル板というリンパ組織です。

腸管を顕微鏡で見てみると、小腸絨毛の間に存在するドーム型の「パイエル板」が見えます。

パイエル板は特に回腸に多く、リンパ小節が集合した腸管独特の免疫組織です。

そのほかにも腸管上皮細胞の至るところにT細胞を主とするリンパ球が存在して、その下の粘膜固有層という組織が免疫細胞を貯蔵する場所になっています。

腸に存在するB細胞は抗体を産生し、液性免疫として免疫力を発揮しています。

一方、腸に存在するT細胞は、細胞性免疫の場で強力な免疫力を発揮します。

骨髄でつくられて細胞を通過したT細胞がパイエル板に運ばれると活性化されます。

異物を排除する力だけでなく、体内にできたがん細胞などに対して強力な免疫力を示すのです。

前述したとおり、私たちの体の中には毎日約5000個のがん細胞が発生します。がん細胞はもともと身内の細胞だったので、免疫細胞はがん細胞をたたく力はそれほど強くありません

しかし、パイエル板で訓練されたT細胞は活性化されていて、がん細胞を攻撃する力が強いのです。

この腸管免疫は、体内で最大の免疫系です。この腸管免疫にもっとも影響を与えているのが腸内細菌なのです。